福音を読んでイメージしたことがそのまま御言葉の意味であるとは言い切れません。なぜなら翻訳では原文の行間やその背景となることまでも表現できないからです。ルカでイエス様は弟子たちを遣わすことを「狼の群れに小羊を送り込むようなものだ」と譬(たと)えています(10:3c)。一読すれば宣教の困難さや危険について語っていると考えられます。因(ちな)みに「狼の群れ」と訳されていますが、原語では“狼”が複数形で表現されており、「群れ」を意味する言葉はありません。そもそも狼は訳語とは異なり、群(むれ)をなすよりも1~2匹で行動するのを好む夜行性の動物です。このあたりからも日本人の先入観が訳に反映してしまっていることが分かります。とにかく狼は獰猛であり、家畜の捕食者でもあり、人間と共存する動物ではありません(ルカ2:8参照)。もし狼の中に小羊が放たれたとしたら当然のことながら餌食になることは間違いはないでしょう。確かに福音記者ルカは狼を残忍な者たち、また群れを荒らす者たち、即ち、暴力をもって集まりを散らす存在であると認識しています(使徒20:29参照)。ではそれが果たして何を意味されているのでしょうか。
主日の福音