今日の「マルタとマリア」と題された福音箇所は皆さん十分にご存知かと思われます。この中でイエス様はマルタの言い分に対して「しかし、必要なことはただ一つだけである。マリアは良い方を選んだ。それを取り上げてはならない」と言われました(10:42)。ここでイエス様が語られた「良い方」の「方」と訳された言葉は福音書の中でルカにしか見られない「相続分」を意味する名詞です。この特徴的な言葉はシラ書に見られます。そこには、
だが、民の土地には/アロンの受け継ぐ分はなく/民の間で彼には何の分け前もない。主は言われる。「わたし自身がお前の分け前、/お前の受け継ぐべきもの」と(シラ45:22)。
とありますが、ここで「分け前」と訳された言葉がそれにあたります。また「お前の受け継ぐべきもの」は原語では“遺産”や“財産”を意味します。福音書では「良い方」とは文脈から考えて明らかにマリアが「主の足もとに座って、その話に聞き入っていた」ことです(10:39)。であればこのマリアの姿勢が神様からの相続財産を受け取ることになるということではないでしょうか。つまりイエス様に常に心を留めているか否かが問われているのです。
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