イエスの生涯についての諸伝承やQ資料を含めた様々な資料を単に繋ぎ合わせただけでは福音書にはなりません。福音書が福音書として成立するためにはそれらが各福音書記者の意図を以(も)って編集されることが必要なのです。福音書としての成立過程は以下のように図解ができます。つまり下図の(3)「編集」の過程が福音書を福音書たらしめていると言えます。
福音書の理解にとって重要なことは、誰が、何時(いつ)、何処(どこ)で書いたのかということではなく、イエスがどのように描かれているかということだと言えるのではないでしょうか。まさにスヒレベーク(E.Schillebeeckx)が語るように「福音書における登場人物たちの行動様式、つまり著者が彼らに取らせる具体的な行動は、物語の中の人物に対する著者の間接的注釈なので(す)」*2。
(*1)高橋三郎『共観福音書概説』新教出版社、1980年、199頁、参照。
(*2)スヒレベーク(著)『イエス』塩谷惇子(訳)、新世社、1995年、84‐85頁。