聖書を読むにあたって

【福音書を読む前提として-2】

2)聖書の文字を刻むということ

高価な物に文字を刻むにあたってはどれほど緊張したことでしょうか。また刻み込むにあたってはその前に内容を一字毎に頭の中で何度も反芻したことでしょう。パピルスは耐用性の問題からその役目を次第に羊皮紙と呼ばれる物に譲っていったと考えられています。羊皮紙は羊や山羊のなめし皮を用いて作られた物であり、パピルス同様に巻物として保存されたようです。またそこに文字を刻むにあたってもその役割を担った者はかなりの神経を使ったことでしょう。常に念頭に置かなければならないことはパピルスや羊皮紙に聖書の文字を刻むという行為です。それは高価な物に言葉を書き連ね、それを民族の記憶として継承していくことを意味していました。その重圧は現代では想像がつかないものだったことでしょう。また文字の読み書きができるということは社会的地位が高く、教養があったということです。なぜなら奴隷、また労働者階層に属していない所謂(いわゆる)自由人だからこそ学ぶ時間があったからです。それゆえに刻まれた文字によって表現される文章には刻み込む者の知識、教養、品位が表れていると考えても間違いはないでしょう。

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