ユダヤ人たちはイエス様に「メシアなら、はっきりそう言いなさい」と言いました。ここでの「そう」と訳されたギリシア語の名詞をヘブライ語に訳するとレビ記が思い起こされます。そこには、
わたしはあなたたちが奴隷にされていたエジプトの国から導き出したあなたたちの神、主である。わたしはあなたたちの軛を打ち砕き、あなたたちがまっすぐに立って歩けるようにした(レビ26:13)。
とあります。ここで「まっすぐに」と訳された副詞がそれにあたります。因(ちな)みにこの言葉は旧約聖書の中で一度だけしか使われていない非常に特徴的なものです。これを踏まえるとしたらユダヤ人たちはイエス様に“できるものならお前が民を罪の軛から解放し、神様の御許にまっすぐに歩いて行けるようにしてみろ”といった嘲るかのような口調で言い放ったとも考えられます。
実にイエス様はユダヤ人たちによってかなり緊張した雰囲気の中に追い込まれていたと思われます。そこでイエス様は彼等に「わたしと父とは一つである」と言われたのですから(10:30)、ここにも旧約聖書を踏まえた意図があるはずです。次回はこのことについて考えてみましょう。