確かに今日の箇所は「ハンナの祈り」の中での、
食べ飽きている者はパンのために雇われ/飢えている者は再び飢えることがない。子のない女は七人の子を産み/多くの子をもつ女は衰える(Ⅰサムエル2:5)。
を下敷きにしたものと考えられます。子供に恵まれなかったサムエルの母ハンナは男の子が授かることを祈り求め、聞き入れてもらえたのならその子を主に捧げると誓いました(Ⅰサムエル1:11参照)。マリア賛歌は全体としてハンナの祈りに類似していると言えます。その祈りの根底にはどのような苦境であっても神様によって状況が逆転するという希望があります。
ところでハンナの祈りに見られないのが「追い返されます」というマリア様の言葉です。これは詩編を思い起こさせてくれます。そこには、
神は燃える怒りと憤りを/激しい怒りと苦しみを/災いの使いとして彼らの中に送られた(詩編78:49)。
とあります。ここで「送られた」と訳された言葉がそれにあたるのですが、これを踏まえるとマリア様は神に反する者たちには神様の怒り、憤りが向けられ、それらが具体的な苦しみとして彼等に遣わさるということを言葉にしていると考えられます。