マリア様の「飢えた人を良い物で満たし、/富める者を空腹のまま追い返されます」という神様への賛美は当時の現実を反映したものであるとも考えられます(1:53)。マリア様は現実が覆る希望を言葉にしただけではなく、神様の御心それ自体を口にされたということでもあります。確かにマリア様の賛歌はハンナの祈りを踏まえたものであると言えます。しかし詩編や箴言を踏まえて神様への信頼を更に深めた祈りの言葉がそこに表れていると言えるでしょう。その信頼とは主なる神様に必要、且つ時宜にかなったものを願い求めるのであればそれに事欠くことはないということです。また「飢え」という言葉には身体的なことだけではなく霊的なものも含まれていると言えるでしょう。飢えることなくパンを食べ飽きているかのような豊かな者、また富に過度に執着する者は神様に敵対しているかのようものです。神様に反する者たちはいくら御許に行こうとしても神様から追い返されるばかりではなく、怒りと災いの襲来を受けることになります。つまり主なる神様を信じて生きる者は満たされるということがマリア賛歌の根底にあると言えるのではないでしょうか。
主日の福音