英語で学ぶキリスト教

Pentecost

When the day of Pentecost had come, they were all together in one place. And suddenly a sound came from heaven like the rush of a mighty wind, and it filled all the house where they were sitting.(Acts 2:1-2RSV)
五旬祭の日が来て、一同が一つになって集まっていると、突然、激しい風が吹いて来るような音が天から聞こえ、彼らが座っていた家中に響いた。(使徒言行録2章1~2節 新共同訳)

2025年6月8日は「聖霊降臨の主日(Pentecost)」です。 この日、礼拝やミサでは使徒言行録の2章1~11節が読まれます。 ここではその冒頭部分を引用しておきました。

英語聖書と日本語聖書を読み比べてすぐに気づくのは英語ではthe day of Pentecost、日本語では「五旬祭の日」と書かれていることです。 その点について少し考察してみましょう。

まず英語のPentecostですが、その語源は50を意味するギリシャ語のpentekosteです。 このpenteは数字の5を意味していて、例えば旧約聖書のいわゆる「モーセ五書(創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)」は英語ではPentateuchと呼ばれています。

余談ですが、アメリカ国防総省は上空から見ると建物が五角形であることからPentagonと呼ばれていることは良く知られています。 また、港湾浚渫などの海洋土木を主たる業務とした五洋建設株式会社(本社:東京都文京区)という建設会社がありますが、同社の英語名はPenta Ocean Constructionです。

閑話休題(それはさておき)。

そこで、なぜ「聖霊降臨の主日(Pentecost)」が50日と関係があるかということですが、「五旬節」の旬は月の上旬・中旬・下旬の旬ですので、五旬とは50日であり「五旬節」は50日目に祝う祭日ということになります。 言い換えると、「五旬節」つまり「聖霊降臨の主日(Pentecost)」は「復活祭(Easter)」から40日目の「主の昇天(Ascension Day)」を経て更に10日後となるのです。

この50日目ということに関してレビ記には次のように書かれています。

And you shall count from the morrow after the sabbath, from the day that you brought the sheaf of the wave offering; seven full weeks shall they be, counting fifty days to the morrow after the seventh sabbath; then you shall present a cereal offering of new grain to the Lord. (Leviticus 23:15-16 RSV)
あなたたちはこの安息日の翌日、すなわち、初穂を携え奉納物とする日から数え始め、満七週間を経る。七週間を経た翌日まで、五十日を数えたならば、主に新穀の献げ物をささげる。(レビ記23章15~16節 新共同訳)

これは「過ぎ越しの祭り(ぺサハ)」、「仮庵の祭り(スコット)」と並んでユダヤ三大祭りの一つである「七週の祭り(シャブオット)」が「過ぎ越しの祭り(ぺサハ)」から50日目にあたることを表しています。 さらに、それがちょうど麦の収穫期でもあることから「刈り入れの祭り」の意味も兼ねており、出エジプト記に次のように書かれています *1。

And you shall observe the feast of weeks, the first fruits of wheat harvest, and the feast of ingathering at the year’s end.(Exodus34:22 RSV)
あなたは、小麦の収穫の初穂の時に、七週祭を祝いなさい。年の終わりに、取り入れの祭りを祝いなさい。(出エジプト記34章22節)

新約聖書は「聖霊降臨の主日(Pentecost)」の出来事を記していますが、それが旧約聖書に書かれているユダヤの伝統にも則っていることが理解できると思います。

最後に岩下壮一神父の言葉を引用して本項を閉じることにいたしましょう。

「ペンテコステの日にペトロおよび彼と共にありし一団の人々の胸中に、火のごとく燃え出でたる新しき霊的自覚が、歴史を通じて発現するのである。そはこれを信ずるすべての人にとって、救いたる神の大能である」*2

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(*1)手島勲矢編著『わかるユダヤ学』日本実業出版社、2002年、80頁及び328頁。
(*2)岩下壮一『カトリックの信仰』筑摩書房、2005年、668頁。

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